ローコードとは、視覚的なインターフェースと既存のコンポーネントを活用し、手作業によるコーディングを減らして、アプリケーションの開発・導入期間を短縮する手法です。ただし、企業は引き続き、要件、アーキテクチャ、システム連携、セキュリティ、運用を適切に管理する必要があります。ノーコードと比べると独自のロジックを追加でき、従来型の開発と比べると設定と再利用を重視する点が特徴です。効果を得るには、対象範囲が明確で、成果を測定できる業務課題から取り組むことが重要です。

ローコードとは何か、何を変えるのか

ローコードは、視覚的なインターフェース、データモデル、既存のコンポーネントを用いて、手作業で記述するコード量を削減するソフトウェア開発手法です。すべての機能を一からプログラミングする代わりに、ドラッグ&ドロップによる画面作成、業務ルールの設定、APIを介したデータやサービスの連携が可能です。固有の要件に対応する必要がある場合は、開発者がカスタムコードを追加できます。

変わるのは、画面を作る速さだけではありません。コードを一行ずつ記述する作業の一部が、業務プロセスのモデル化、コンポーネントの設定、連携方式の標準化、成果物の品質管理へと移ります。その結果、開発者はアーキテクチャ、固有のロジック、システム連携、セキュリティなど、プラットフォームだけでは対応できない課題に、より注力できるようになります。

ローコード、ノーコード、従来型開発の違い

ローコードを理解するには、ノーコードや従来型開発との違いを押さえる必要があります。この3つの手法は、互いに排他的なものではありません。例えば、簡単なフォームにはノーコード、業務アプリケーションにはローコード、高い性能や柔軟なカスタマイズが求められる基幹システムには従来型開発を採用するなど、企業内で使い分けることができます。

ノーコード、ローコード、従来型のプログラミングを、必要なコーディング量、カスタマイズの自由度、適した利用シーンの観点から比較します。
ノーコード、ローコード、従来型のプログラミングを、必要なコーディング量、カスタマイズの自由度、適した利用シーンの観点から比較します。

ローコードは企業の開発をどのように加速するのか

初期段階でアプリケーションを短期間に構築できたとしても、プロジェクト全体の納期が早まるとは限りません。要件が不明確であったり、データ連携が難しかったり、プラットフォームが業務上の例外に対応できなかったりすると、画面作成で短縮した時間が、テストや運用段階での手戻りに費やされる可能性があります。

要件から試行までのサイクルを短縮する

既存のコンポーネントを活用することで、プロジェクトチームはプロトタイプを作成し、ユーザーに試してもらい、本格的な投資を行う前に要件の誤りを発見できます。大きな利点は、検証と学習のサイクルが速くなることです。業務部門は早い段階で具体的な解決策を確認でき、技術チームはアーキテクチャの変更が難しくなる前にフィードバックを得られます。

業務部門と技術部門をつなぐ

視覚的なモデルは、業務ユーザーが処理の流れを説明し、試作版を確認する際に役立ちます。ただし、アーキテクチャ、データ、セキュリティ、品質、保守性については、引き続きIT部門が責任を担う必要があります。ドラッグ&ドロップという操作そのものよりも、こうした部門間の連携が重要です。

再利用を進めながらガバナンスを維持する

フォーム、ログイン、ロール、通知、データ接続は、標準化することで複数のアプリケーションに再利用できます。一方、シャドーITとは、IT部門の管理の枠組み外で利用されるアプリケーションやツールを指します。データ、権限、テスト、リリースに関するルールを定めずにアプリケーション作成を開放すると、初期の開発スピードと引き換えに、類似アプリケーションの乱立、保守の困難化、シャドーITの発生につながる可能性があります。

ローコードの限界とは

すべてのアプリケーションが、視覚的な設定による開発に適しているわけではありません。以下の特徴を1つ以上持つシステムでは、慎重な判断が必要です。

  • 独自のアルゴリズム、リアルタイム処理など、既存のコンポーネントでは満たしにくい性能要件がある。
  • 画面やユーザー体験を細部まで高度にカスタマイズする必要がある。
  • 長期間利用する基幹システムであるにもかかわらず、プラットフォーム側でエクスポート形式、ソースコード、移行の道筋が明確に示されていない。
  • 機密性の高いデータについて、保存、分離管理、監査に関する要件をベンダーが満たしていない。
  • ユーザー数、アプリケーション数、実行回数に応じてライセンス費用が増え、利用拡大時に総保有コストが予算を超える。

ベンダーロックインのリスクは、導入当初から検討する必要があります。プラットフォーム間の相互運用性に関する研究では、形式に互換性がない場合、別のツールへの移行時にデータモデル、画面、ワークフローの再構築が必要になる可能性が指摘されています。

ローコードはどのような業務課題に適しているのか

一般的に適しているのは、業務プロセスが明確で、成果を検証できる用途です。社内ポータル、依頼管理、承認処理、案件の進捗管理、運用ダッシュボードなどが挙げられます。基幹システムやリアルタイム処理については、個別に評価する必要があります。

購買申請プロセスを例に考える

購買申請プロセスを例にすると、ローコードの実際の活用方法がわかりやすくなります。ある企業が購買申請をメールと表計算ソフトで処理しており、進捗を把握しづらく、入力情報に不足が生じやすく、報告資料も手作業で集計しているとします。

試験的に構築するローコードアプリケーションには、申請フォーム、承認ルール、通知、ログ、ダッシュボードなどを組み込めます。これにより、情報を一元化し、処理状況を追跡できるようになります。

ローコードを活用して購買申請をデジタル化し、申請フォームの標準化、承認状況の追跡、処理履歴の保存を実現する活用例。
ローコードを活用して購買申請をデジタル化し、申請フォームの標準化、承認状況の追跡、処理履歴の保存を実現する活用例。

まずは1つの部門で試行し、導入前のデータを比較の基準として記録したうえで、以下の指標を確認することが望まれます。

  • 申請から判断が下されるまでの所要時間の中央値。
  • 入力項目の不足により、情報の追加が必要となった申請の割合。
  • 申請1件当たりの、メールやメッセージによる手作業でのやり取りの回数。
  • 承認者と変更履歴を追跡できる申請の割合。
  • 申請1件当たりのライセンス費用、導入費用、運用費用。

これは説明のための例であり、実際の導入成果や効果を保証するものではありません。価値を確認するには、同じ対象範囲について、導入前後のデータを比較する必要があります。

企業はどのような基準でプラットフォームを選ぶべきか

ローコードの特徴を理解したうえで、実際の要件に基づいてプラットフォームを選ぶ必要があります。Antonio Lamanna(2025)は、プロセス、ユーザーインターフェース、システム連携、ガバナンスとセキュリティ、AIを活用した自動化という5つの評価分野からなる、重み付きスコアリングモデルを提案しています。これはarXiv上の研究プレプリントであり、遵守が義務づけられた規格ではありません。

以下のチェックリストは、費用と移行性の観点を加え、本記事で参考用に整理した7分野の評価枠組みです。研究モデルをそのまま再現したものではありません。

企業が自社に適したローコードプラットフォームを評価・選定するための7つの基準をまとめたチェックリスト。
企業が自社に適したローコードプラットフォームを評価・選定するための7つの基準をまとめたチェックリスト。

業務課題に応じて評価基準の優先順位を決める

すべてのプロジェクトに同じ重み付けを適用すべきではありません。社内承認アプリケーションでは、プロセスのモデル化や権限管理を優先する場合があります。複数のシステムを連携させるアプリケーションでは、データ同期やエラー処理の仕組みを詳しく評価する必要があります。

テストシナリオで実際の対応力を検証する

ベンダーには、例外を含む具体的な業務プロセスのデモを依頼しましょう。承認者が不在の場合、入力データに誤りがある場合、接続が途切れた場合に、システムはどのように処理し、記録するのでしょうか。どこまで設定で対応でき、どこからコードの記述が必要なのでしょうか。

評価結果は、試作版、技術資料、利用拡大時の費用見積もりと併せて確認する必要があります。また、カスタムコードの所有権、データのエクスポート形式、契約終了時のサポート責任も明確にしておくことが重要です。

試行から展開までの導入の進め方

ステップ1:小さくても価値のある業務課題を選ぶ

繰り返し発生する業務で、責任者と対象範囲が明確であり、測定に必要なデータが十分にあるプロセスを優先します。最初のプロジェクトでは、基幹システムや機密性の高いデータを対象とすることは避けましょう。

ステップ2:評価の基準となるベースラインを設定する

導入前に、処理時間、エラー率、手作業の工程数、費用、満足度を記録します。ベースラインがなければ、プロジェクトチームが効果を示すことは難しくなります。

ステップ3:作成権限を付与する前にガバナンスを設計する

アプリケーションを作成できる担当者、データ接続を承認する担当者、命名規則、テスト手順、バックアップ、ログ管理、障害対応の責任を定めます。

ステップ4:MVPを構築し、ユーザーとともにテストする

初期版では、主要な業務フローと、重要な例外の一部に対象を絞ります。アクセス権限、不正な入力データ、同時操作、接続断、復旧機能をテストします。

ステップ5:評価を行ってから展開範囲を広げる

結果をベースラインと比較し、フィードバックを整理して、ライフサイクル全体の費用を算出します。効果、セキュリティ、保守性、ユーザーの受容度について、設定した基準を満たした場合にのみ展開を拡大します。

DTSVNの視点:開発の加速を支える技術基盤

DTS Software Vietnamは、日本の株式会社DTSのグループ会社として、ITOおよびBPOサービスを提供しています。公式ウェブサイトでは、ビジュアル開発ソリューションを対応領域の1つとして位置づけるとともに、ソフトウェア開発、テスト、データ関連サービス、クラウド、システムモダナイゼーション、セキュリティ、運用などのサービスを紹介しています。

ローコードプラットフォームを利用するプロジェクトにおいて、技術パートナーの価値は、アプリケーションを構築する作業だけにあるわけではありません。業務プロセスの調査、要件の明確化、技術的な対応範囲の整理から取り組む必要があります。既存のコンポーネントによる設定で対応できる部分、個別開発が必要な部分、連携すべきデータ、必ず維持すべき管理上のチェックポイントを見極めることが重要です。

DTSVNは、業務課題の評価、アーキテクチャ設計、試作版の構築から、システム連携、テスト、運用まで支援できます。設定と個別開発を組み合わせることで、企業は開発・導入のスピードを活かしながら、拡張性、セキュリティ、品質管理を維持できます。また、将来プラットフォームが要件に合わなくなった場合に備え、移行費用を抑えられるよう、アーキテクチャとデータの両面で準備しておくことも必要です。

プラットフォームや試行範囲を決める前に、DTS Software Vietnamの業務対応力クラウドとシステムモダナイゼーションへの取り組みノーコード・ローコードによる市民開発に関する考え方をご確認ください。具体的な業務課題について、DTSVNにご相談いただくことも可能です。

まとめ:ローコードで加速するためにも、適切な進め方が重要

ローコードとは、モデル、設定、再利用可能なコンポーネントを用いて手作業によるコーディングを減らし、必要に応じて個別開発による拡張も行えるソフトウェア開発手法です。対象範囲が明確で、要件の変更が多く、迅速な試行が求められる業務アプリケーションで、特に価値を発揮します。

  • 画面作成の速さだけでプラットフォームを評価せず、システム連携、データ、セキュリティ、運用を確認する。
  • ベースラインと具体的な成功指標を設定できる業務プロセスから始める。
  • 契約前に総保有コストを算出し、プラットフォームからの移行方針を検討する。
  • アーキテクチャ、テスト、権限管理、ライフサイクル管理におけるIT部門の役割を維持する。
  • ローコードを技術ポートフォリオの一部として位置づけ、あらゆるソフトウェア開発手法を置き換えるものとは捉えない。

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